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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

ちまちまアイドルソング38「Killing Me Softly」/東京女子流

東京女子流 アイドルソング

東京女子流『Killing Me Softly』 

 

avexの5人組ガールズ・ダンス&ボーカルグループ東京女子流の4thアルバムのタイトル曲です。公式のインタビューなどでもロバータ・フラッタの同名曲(邦題は『やさしく歌って』)から取った楽曲とのことです。オマージュ的な要素も感じられますが、基本は門外漢なので、その辺の解説は詳しい人におまかせします。僕は僕なりの『Killing Me Softly』を考えてみたいと思います。

 

「フリーズしたまま終わることができない」

もの悲しいイントロに続いてやってくる頭サビのフレーズがとても衝撃的で、この曲の世界観を一瞬で伝える機能を持っていると思います。例えば、気まずくなってしまった男女交際がなんとなく続いていながら終わりの雰囲気だけがあるとき。仕事で取り返しがつかないよな大きなミスをしてしまったとき。大きな病気や怪我をしてしまったとき。先が見えない就職活動に直面しているとき。そんな時間のことを歌っているのではないかと考えてしまいます。

もう終わって欲しい、リセットしたいような状況。それは人生の中でも最も絶望に近い時間だと思います。一方で、すでに自分自身の力でどうこうできるものではなくなっているような種類の苦境なのかもしれません。いわゆる「頑張ってもどうしようもない」というあきらめの気持ちが強くなるようなときです。

イントロで印象的だった4小節を繰り返し、後ろの方で聞こえるか聞こえないかくらいで流していたり、もしくは間奏で登場させている工夫があります。これは近付いたり離れたり見えたり見えなかったりする"何か"を表現する効果を持っていて、あきらめの気持ちを強調させています。

 

「運命?それともただの偶然かな」

歌詞の中で具体的に男女と思われる「壊れそうな二人」がメインで扱われます。二人が、たぶん喫茶店的なところだと思われるどこかで、行き詰まってしまった別れ話のなり損ないのような時間を過ごしている最中の片方の心の動きを歌った曲なのでしょう。

そこで気になるのがサビのこの歌詞です。たぶん、この歌の主人公こそが運命や偶然の可能性を信じているのではないでしょうか。2番のサビで「勘違いじゃなくて信じていたんだよ」と歌う本人は、唯一、「誰も知らない」とされている「永遠」を信じて期待していたのだと思います。

つまり、フリーズさせているのもリセットボタンを持っているのも、全部この人なのです。きっと彼もしくは彼女が、何かの踏ん切りを付けて行動を起こせば、この状況は打開されるに違いありません。

 

「時間を止めて」

現実の話として、嫌な気持ちをリセットしたいときは多々あります。そういうときには、誰かのアドバイスを期待したり、食や買い物の欲求に身を任せてみたり、明るい曲を聞いて空元気を出そうとしたりするのだと思います。反対に、そんなときほど今いるその時間が憎いと考えることはないはずです。

時間は止まりません。脳は自分に都合が悪いことを徐々に忘れていき、まわりの状況はどんどん変化していくだけです。『Killing Me Softly』の曲中のように自分の力を超えた「フリーズしたまま終わることができない」状況でも、時間だけは機械のように正確に流れていきます。運命や偶然よりもある意味では残酷な真理であり、誰もが逃れられないものが時間なのです。

それこそが救いなのではないでしょうか。時間だけは平等に過ぎていき、それはすべての生きとし生けるものを「やさしく」歌や音楽のように包みながら「殺して」いくのです。

 

TGS00

それは残酷なことであり、みんなに訪れる平等な安息なのでしょう。

辛い時間、耐えがたい時間はあります。男女関係、仕事、健康、就活。自分ではどうしようもないのに逃れることもできない理不尽が生きていればやってきます。そんなときに流れる時間だけは、変わらずに、みんなを同じところに戻してくれると思います。

『Killing Me Softly』東京女子流の最初の楽曲とされています。デビュー曲『キラリ☆』よりも前に存在していて、メロディーは当時の映像でも使われていました。そんな"TGS00"東京女子流の初心であり、元々あるべきものであったグループのあり方を思い出させてくれる存在になるのではないでしょうか。

僕たち私たちの人生にリセットボタンはありません。ただただ時間が流れていき、忘却や追憶の果てに歴史は重ねられ続けていきます。算数でかけ算で0をかけるようにシンプルに現実はなかったことにできないのです。誰もを平等に救う時間の中で、起きたことは起きたこととして残され積まれていくのです。

そんな中で、『Killing Me Softly』は誠実に"ポイント0"を歌っている曲なのです。理想論的なスタート地点ではなく、屍の上にこそ戻ってくるゼロ地点があると教えてくれるのです。

4thアルバムにおいて、これからの東京女子流においてすごく重要な楽曲であることは間違いなく、それを支える強度があることは保証できます。それだけ芯があって、理念があって、伝えたいメッセージがあって、何よりも東京女子流らしい音楽なのですから。

 

ぜひこの曲を聞いて絶望の向こう側にある希望に、本当の"ポイント0"に触れてみてください!

 

 

 

Killing Me Softly (CD+Blu-ray) (Type-A)

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Killing Me Softly

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