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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

東京女子流4thアルバム「KILLING ME SOFTLY」特集

 

「音楽の楽しさを歌って踊って伝えたい」

 

2010年に結成されたavexのガールズダンス&ボーカルグループ東京女子流のキャッチコピーです。

 

アイドルのコンセプトといえば、AKB48は「いま、会えるアイドル」として握手会を身近な存在であり続け、ももいろクローバーZは「ピュアな女の子が、幸せを運びたい」という名前に込められた願いを形にしています。他にも、PASSPO☆の「旅と空」、LinQの「Love in 九州」、Dorothy Little Happyの「聴けばカラダが踊りだす。見ればみんなが恋をする。」、乙女新党の「2軍のアイドル」など挙げるとキリがありませんが、こうしたコンセプトがグループの魅力を外に発信し、わかりやすく伝えるきっかけになります。

 

 

 

Killing Me Softly (CD+Blu-ray) (Type-A)

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2014年6月。東京女子流の4thアルバム『KILLING ME SOFTLY』が発売になりました。今週はリリース週ということで、いろいろと記事を書いております。本日はその集大成。とても気合が入っております!

気合が入る一番大きな理由は4thアルバム『KILLING ME SOFTLY』がとても良かったからです。ティザー映像やリード曲『十字架』から受けていた期待を良い意味で裏切るとんでもないアルバムとなりました。間違いなく傑作です。

ファーストアルバム『鼓動の秘密』、セカンドアルバム『Limited addiction』、サードアルバム『約束』いずれにも並び、もしくは超えることができる作品ではないでしょうか。もし、どれかひとつだけでも聞いたことがあって気に入っている人ならば、間違いなく聞くべき音楽のひとつです。

また、今まで東京女子流の作品が刺さらなかった、ハマらなかった人たちにとっては最高の入口となることを保証します。だまされたと思って聞いてみてください。

「そんなの信用できないよ」と言いたそうな顔も見えますし気持ちもわかります。そういう人たちの心を動かすことを目指して、今日は記事を書いてみたいと思います。よろしくお付き合いください。

 

1.Intro

東京女子流のアルバムでは定番になっているこの仕掛け。サードアルバム『約束』を大好きな人ほど嬉しく楽しみだったことでしょう。個人的に、近未来的なサウンドから一転した着地にけっこうビックリしました。

 

2.Killing Me Softly

詳しくは昨日のブログをご覧ください。東京女子流の原点でもあり楽曲の大きなテーマは"時間"です。これは4thアルバムを通しても大きなテーマになっていて、ジャケットや盤面にもモチーフとして時計が描かれています。

 

3.pain

『Bad Flower』『幻』共通した歌詞のテーマ、『ディスコード』『眩暈』を思い出させるサウンドなど東京女子流のロックサウンドで激しい一面を凝縮したような楽曲です。長めのイントロと個人的には頭サビ後に再びやってくるエレキギター"くどさ"にニヤニヤが止まりません。

 

4.運命

12thシングル。セカンドアルバム『Limited addiction』的なディスコティックなサウンドの発展系を思わせる楽曲でワンループで繰り返されるフレーズがメインで、東京女子流のボーカル以上に主張している曲だと思います。僕は曲の間奏を聞くために音楽を聞いているような人間なので、こういう楽曲がすごく嬉しくて、もっと言えば間奏に魂を宿しているような曲を作るアーティストが大好きです。もちろんその中に東京女子流は入っています。

 

5.Partition Love

15thシングル。『運命』に続いてディスコティックなサウンドで、自身が東京女子流ファンであるBase Ball Bear小出氏が制作に関与していることもあって"THE東京女子流"もしくは"俺たちが聞きたかった東京女子流"みたいな楽曲になっています。また、先ほどの『pain』など東京女子流の曲は過去作から世界観を引き継いでいることがあり、『Partition Love』からはじまる恋愛3部作がどのように展開されていくのか楽しみです。

 

6.ちいさな奇跡

14thシングル。アニメはなかっぱのエンディングテーマ曲であり、その文脈を含めて『おんなじキモチ』『大切な言葉』の続編となっています。「花」や「大切な言葉」など歌詞を引き継ぎながら、ファンクなサウンドで繋がりを感じさせてくれます。東京女子流の楽曲は繋がっています。このように明示されていることもあれば、僕たちが勝手にくみ取っているものも含めて、ひとつの作品がひとつではなく、今までとこれからを結ぶことを意図していると僕は思っています。

 

7.恋愛エチュード

ファーストアルバム『鼓動の秘密』的な軽快なサウンドと可愛らしい歌詞の青春ソングです。ハードで難解な楽曲を得意とする"最近の女子流"のイメージが強いアイドルファンの人にとっては「こんな曲もあるのか」と嬉しい喜びになるのではないでしょうか。他グループではParty Rockets『セツナソラ』Dorothy Little Happy『ストーリー』的な芽生えた恋愛の気持ちへの期待と不安をコンパイルした、王道アイドルソング的な世界観があります。

誰しもが経験するそんな等身大の瞬間はまさしく青春の"時間"です。収録曲のすべてが、人生における様々な感情を抱く瞬間の時間なのではないかと僕は感じています。『pain』に苦しむときも、『運命』を信じたいときも、『Partition Love』に憧れるときも、おとずれた『ちいさな奇跡』に感動するときは誰にだってありえることではないでしょうか。もちろん続く8曲目以降の楽曲でも感じさせてくれますが、そんな『Killing Me Softly』が提示したアルバムのテーマの入口にあるような甘酸っぱく初々しい作品です。

 

8.ずっと 忘れない。

『恋愛エチュードに続いて軽やかでベースが心地よい楽曲です。ファーストアルバム『鼓動の秘密』収録の人気曲『きっと 忘れない、、、』の姉妹作としてアナウンスされています。『きっと 忘れない、、、』は美しいメロディーともう会えない友達への思いを描いた楽曲で、そのアンサーソングとして作られたこの曲では「土砂降りの雨」や「途中で終わった花火」など思い出が具体的に語られます。その上で、ここが白眉だと思うのですが、「どんなものでも壊れてしまう」や「失ってやっとわかるよきっと」と『きっと 忘れない、、、』では歌われていなかった喪失の気持ちを表現しているのです。おそらく、これは『きっと 忘れない、、、』の相手側の歌です。視点が違うからこそ感じる決して前向きなだけではない感情が歌われていて、ふたつを重ねて聞くことで世界に奥行きと現実性が生まれます。

前述してきたように、東京女子流の楽曲には繋がりがあります。それは、安易なオマージュや記号的なリサイクルでは終わっていません。歌やダンスの難易度、サウンド面の新しい挑戦、そして楽曲の登場人物の成長を盛り込もうとしているのではないでしょうか。

 

9.十字架

16thシングルであり4thアルバム『KILLING ME SOFTLY』のリードシングルです。楽曲のテーマや狙いについての考察は前のブログをご覧ください。読んでもらった前提で書きますが、アルバムではアレンジが大きく変わっており、『十字架』の持つホラー系J-POP的な存在感が大きく改変されています。シングル版がJホラー的な隠す恐怖だとすれば、アルバム版はハリウッド的な見せる恐怖といった感じでしょうか。アウトロのこっくりさんが元ネタである決めフレーズのリフレインなどまさしくそんな恐怖感覚です。

そんなシングル版との繋がり、楽曲のテーマである"二面性"を考えるとこのアルバムの中でも重要作であると推測できます。

 

10.Mine

14thシングル収録曲。ロックサウンドが主体であり、東京女子流自身の言葉ではと感じさせられる歌詞もありハッとさせらる楽曲です。彼女たちらしい控えめさを保ちながら、自己言及をして、身近さを感じさせてくれます。だから、ライブで盛り上がる理由はサウンドだけではないと思います。

4thアルバム『KILLING ME SOFTLY』の本編最後の曲であり作品のテーマに関わる最後のピースがそろいました。出会いと別れ、ロックとディスコ、現在と過去、自分と相手など"二面性"を歌ってきた楽曲群に、いよいよ実在性と虚構性が加わったのです。そのすべての要素のどんなときでも"時間"は平等に流れ、その残酷さとやさしさが背景にあるのです。

 

11.Outro

ファンファーレのような華やかさのある楽曲で、『intro』と9つの作品による東京女子流の新しい表現は終わります。シングルをリアルタイムで聞いていた誰もが、こんなにまとまったアルバムになるとは思っていないのではないでしょうか。こうして物語は続きますし、このブログではもう少しだけ言いたいことが残っていて続いてしまいます。

 

12.Last Forever -Royal Mirrorball Mix-

13.Get The Star -Royal Mirrorball Mix-*1

東京女子流の作品で番外編的な2曲の松井寛氏アレンジ版リミックスが、ボーナストラックとして収録されています。そして、特に『Get The Star』はグループの不振の象徴のように揶揄され、一方で、2013年の武道館公演においてそんなすべてのマイナスイメージを吹き飛ばしたドラマティックな楽曲です。

この2曲が生まれるきっかけである番組東京女子流のスレスレTV!』の中で作曲者のJは「思った通りに 感じるままに」存在するのがロックミュージックだと話します。初めての作詞や小西彩乃のドラムへの挑戦はまさしくその精神の現れであり、大人による作り物の世界ではない5人の少女による東京女子流が生まれた瞬間なのです。

東京女子流は常に"二面性"を抱えています。一流のスタッフが作った完成度が高い作品に対する発展中の5人、大人っぽい世界観に対するまだまだ幼く拙い少女。そして、東京女子流のスレスレTV!』『Get The Star』を通して、東京女子流は虚構性と並び立つ実在性を獲得し、プロジェクトの外側という客観性を知りました。

そこには、"誰か"を踊らせるだけではなく"自分"が心から音を楽しむという音楽の魅力の二面性も含まれているように思えます。

 

東京女子流「音楽の楽しさを歌って踊って伝えたい」というコンセプトはあまりに大きなものです。

プロジェクトにおいて、楽曲制作やダンスの振付、衣装やMV等のビジュアル面等すべてに高いレベルのものが要求され、大人たちはフレッシュな仕事を成し遂げてきました。それに応える、まだ幼さが目立ったメンバー5人は全力の努力と必死の成長を示し、及ばない部分について、特にアイドルファンは"成長途中のギャップ"などと勝手に受け取って満足を得てきました。

ある時期「東京女子流はお人形さんみたい」という声をよく聞きました。その言葉通り、圧倒的な大人の仕事に対してメンバーは幼く、場合によってはひたすら"受け身"で"やらされているもの"として見えたのかもしれません。

東京女子流とそのプロジェクトはそう見られることを認めませんでした。なぜならば、グループのコンセプトかつ使命である「音楽の楽しさ」は受動的なものだけではなく、内面から発せられるもっとアクティブなことも含まれているのですから。

 

ファーストアルバム『鼓動の秘密』こそ最高傑作だと話す人もいます。ここまで読んでもらえればわかると思いますが、決してそんなことはありません。ふざけるんじゃないよとすら言いたいです。

では、4thアルバム『KILLING ME SOFTLY』こそが最高傑作なのかと聞かれたならば、僕は考え込んでしまうでしょう。現時点ではそうかもしれません。アイドルソングの重要作であり、J-POPや歌謡曲のシーンでも必聴のアルバムだと思います。間違いありませんし保証します。今年どれか一枚だけCDを聞きたいという人がいるならば、このアルバムかDorothy Little Happyのセカンドアルバムを勧めます、絶対。

 

ただ、東京女子流の作品として長い目で考えるならば少しだけ違う感想です。4thアルバム『KILLING ME SOFTLY』は必聴でアイドルソングの歴史に残ることは当然として、その上で、むしろ"はじまりの作品"なのではないかと感じています。

 

グループの存在意義である「音楽の楽しさを歌って踊って伝えたい」ことに初めて正面から、変化球ではなく直球で、逃げ道をなくして向き合って成立させることができた作品ではないでしょうか。それが僕にはひたすらに嬉しいですし、みんなに聞いて欲しいという願いそのものです。

 

『Last Forever』の歌詞の中に「正しく 真っ直ぐ」というものがあり、すごく真摯な言葉だと思います。そんな風に活動が続くならば、東京女子流が存在し続けるならば、こんなに嬉しいことはありません。

きっともっと多くの人に東京女子流は知られるべきだと思います。なぜなら、こんな時代に「音楽の楽しさ」やパワーを伝えてくれる最重要グループになるのですから。

 

そんな風に、これからも応援したい、今までのことを知りたい、そう思わされる作品でした!!

 

 

 

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*1:※ボーナストラックとしてABC盤それぞれに1〜2曲ずつ収録されていますが解説は割愛します