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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

9nine「MAGI9 PLAYLAND」のこと

アイドルソング 音楽

6月18日にリリースされました9nineのサードアルバム『MAGI9 PLAYLAND』を聞きました。なかなか語りがいがある作品なのでした。

 

パラレルワールド9nine

1曲目「できるよ さあ始めよう」と再スタートを宣言するシングル曲『Re:』は、このアルバムが新しい世界を見せようとしていることを提示します。それは、今までの9nineとは違う音楽の世界であり、今までに見せたことがない9nineの姿であり、言ってみればパラレルワールド9nineなのだと思います。それは、9nineの経験や過去をなかったものにするものでは決してなくて、新しい可能性であり、もうひとつの姿です。

 

賛否両論??

フラゲ日以降のTwitterのタイムラインで流れてくる感想やアイドルファンの声は決して絶賛ではありませんでした。それは、Amazonのレビューにもしっかり現れてしまっています。 

MAGI9 PLAYLAND(初回生産限定盤A)(DVD付)

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感想のブログ等も少し掘ってみましたが、 MAGI9 PLAYLAND』を受け入れられない声も少なくありません。困惑や落胆、そして「聞きたかったのはこれじゃない」という気持ちを最も多く感じました。

 

MAGI9 PLAYLAND』が示すもの

冒頭に書いた通り、このアルバムは「今までと違うことをする」と宣言している作品です。誰も見たことがない9nineの姿にファンの中でも好き嫌いがわかれてしまうのは、当然の結果なのかもしれません。それだけ、攻めた作品なのですから。同様に、視点を変えれば、一部のファンからの低評価はMAGI9 PLAYLAND』が新しいことに成し遂げた証拠とも言えます。では、このアルバムが開いた世界は一体どんなものなのでしょう。

 

アルバムは『Re:』を作詞作曲したOZOさんと、『Evolution No.9』を作詞作曲した101さんの2人による全16曲が入っています。MAGI9 PLAYLAND』のような挑戦をするようなアルバムはコンセプトアルバムと呼ばれる種類であることが多いのですが、通常、コンセプトアルバムは8曲〜12曲程度に収められていることが多いです。コンセプトをうまくまとめる上ではそれくらいの曲数が限度であり、それ以上だと散漫になってしまうことがほとんどだからです。じゃあ駄目かというと、そうではなくMAGI9 PLAYLAND』では16曲という多すぎる曲数も大きな主張となっていると思いました。

 

収録曲は「ドン・ドン・ドン・ドン」という四つ打ちダンスミュージックの曲がほとんど全部です。その中でも、近年EDM(Electronic Dance Music)と呼ばれる派手目なエフェクトがかかった種類に近いです。9nineの王道とされた上質なポップソングが聞けないことを悲しむ人も多いかと思いますが、一方で単純にEDMのアルバムとして聞くとどうかと言えば、品が良く上品さが残っているように感じます。ポップソング的には異端であり、EDM的にはポップという、とらえどころがないバランスのサウンドです。

 

歌詞や曲同士の世界観の繋がりについても、枠にはめられることを避けようとしています。2曲目『Forget-U-not』と3曲目『With you / With me』のように姉妹のように似ていて関連が強い曲が並んでいます。しかし、4曲目『THE MAGI9AL FES.』から歌詞の中のテンションも向いている方向も違う歌が続きます。一方で、BPMやサウンドには似た部分があったり、曲間が妙に詰まっていたりすることもあって、曲から曲にスムーズに感情移入をさせてくれません。

特に初めて聞いたとき、中盤にかけて聞きながら頭がぼーっとしてしまう人、クラクラする人は少なくないのではないでしょうか。なぜなら、聞き手がスムーズに理解できないようにしようとする意図が、曲順や曲間に込められていると僕には思えてしまいます。そんなちょっといじわるな仕掛けによって、収録曲の実態がわかりにくくされていて、人によっては「同じような曲ばかりに」聞こえてしまうのです。

16曲という曲数、とらえどころがないサウンド、収録曲の繋がりをスムーズに理解させない仕掛け、この3つがMAGI9 PLAYLAND』に与えている効果、それは「カオス状態を作り出す」ことです。一度や二度聞いただけで、何となく聞いただけで、頭に入ってくるような優しいアルバムではありません。

 

収録曲の歌詞を読んでいくと、「you⇔me」「ボク⇔キミ」「わたし⇔君」など『ATASHI≒WATASHI』の曲で歌われるように反対の立場の主人公の等身大が歌われていることがわかります。前に進んだかと思えば、後ろに下がっているMAGI9 PLAYLAND』の主人公の視点は、そのときどきでバラバラで、違う世界を見せてくれます。アルバムを通して、ワンダーランドに迷い込んでしまったような体験をさせてくれる作品であり、異なる時代・世界・視点を並べて提示した多様性こそがMAGI9 PLAYLAND』が表現したかった本質なのだと思います。

 

 

9nineの成長と進化のアルバム

前の項に書いた「好き嫌いがわかれること」も「困惑すること」も、「聞いていて不安になること」も新しいアルバムで9nineが今でと違う方向性を示したことだけが原因ではないのだと思います。そうした混乱や不安、評価の相違を生むこともMAGI9 PLAYLAND』が提示した表現そのものなのですから。

 

MAGI9 PLAYLAND』は大作です。

 

このアルバムの収録曲は、ただのダンスミュージックではなく、高い歌の表現力が要求されるものばかりです。言葉の向こう側にある意味やメッセージを響かせる歌は9nineだから可能になっているものだと思いますし、過去のアルバムや楽曲の経験があってこそだと思います。生の歌声で、巨大なステージの上でMAGI9 PLAYLAND』の歌たちが本当の姿を見せる武道館では、きっと素晴らしいものを見せてくれるはずです。MAGI9 PLAYLAND』が好きじゃない人、よくわからない人にとって、今の気持ちが反転してひっくり返る経験ができる日になることでしょう。

 

MAGI9 PLAYLAND』を聞いて、僕はなぜかサニーデイサービスの『24時』というアルバムを強烈に思い出しました。長すぎることと混沌としていることが少し似ている僕の青春の一枚は、いまだに何が素晴らしくてどこを好きなのか自分でもよくわかりません。きっと、MAGI9 PLAYLAND』のことが強烈に好きになってしまった人がいると僕は思っています。アルバムに込められたカオスは、誰かの心のどこかに刺さり共鳴し、胸の中であなただけの音楽を鳴らすはずです。まわりが何と言おうと、どう評価しようと、関係なくそれはあなたの音楽で、それを鳴らすMAGI9 PLAYLAND』は特別な作品に違いないのです。

 

そんなこんな、好き嫌いがわかれるアルバムだということは承知の上で、ぜひ多くの人に聞いて欲しい作品です。歌詞カードにしがみついて、9nineの未来に照らされながら、一緒にワンダーランドをさまよいましょう!

 

 

9nine 2013 LIVE「be!be!be!-キミトムコウヘ-」 [Blu-ray]
 
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