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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

「DOCUMENTARY of AKB48 The time has come 少女たちは、今、その背中に何を想う?」が伝える強さの秘密

公開から少し経ってしまいましたが、やっと見ることができました。

AKB48のドキュメンタリー映画として4作目、高橋栄樹(エイキ)監督の3作目となる本作は、過去作と違うアプローチ方法で作られた、とても中身が濃い映画となりました。

僕は女性アイドルは大好きですが、AKB48のことはそれほど詳しくありません。少し離れた視点から、アイドル(についての)映画として、感想を語ってみたいと思います。

よろしくお付き合いください!

 

『DOCUMENTARY of AKB48 The time has come 少女たちは、今、その背中に何を想う?』

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<ストーリー>

AKB48をけん引してきた前田敦子が2012年に卒業し、2014年にはグループの中心的存在として活躍してきた大島優子も卒業することに。さらに2014年6月には、メンバーたちがセンターをめぐり火花を散らす選抜総選挙が待ち受けている。AKB48グループ総監督を務める高橋みなみや、前回の選抜総選挙トップの指原莉乃、高い人気を誇る渡辺麻友らもしのぎを削り……。(シネマトゥデイより) 

 

 

 

斬新かつ王道のドキュメンタリー映画

高橋監督が手がけた過去2作とあわせて、2014年版AKBドキュメンタリーも“戦争映画”のようだとすでに語られているかと思います。同じく、“新兵の成長物語”としての側面や、“トップが無茶するブラックな組織の大騒動”としての見方もできます。そして、この映画の手法はあるジャンルの映画に近いものだと感じました。

本作の新しい要素として、高橋監督が自分でカメラを持ち、単身でAKB48のメンバーに密着取材形式で撮影したことがあります。全体の6割程度が高橋監督の撮った映像だと言うのですから驚きです。メンバーとの距離を縮め、近くで撮影することが目的で、そうすることでよりパーソナルな映像を目指したとのことでした。

 

この「普通は不可能なところにカメラを入れて、驚きの距離感の映像で観客を驚かせる」という方向性は、2003年『ディープ・ブルー』、2005年『皇帝ペンギン』、2007年『アース』、2011年『ライフ -いのちをつなぐ物語-』などのBBCが得意とするイメージの動物ドキュメンタリー映画に近いと僕は感じました。対象物が大自然と野生動物からAKB48の世界とアイドルたちではまるで違いますが、どちらも簡単には足を踏み入れられない場所の、リアルタイムな情報が求められている存在であり、そこにカメラを入れることで“映画”を成立させようという点では、あながち間違っていないと思います。

動物ドキュメンタリーでのこの手法の効果は、対象の動物たちの目線を人間と合わせられることです。本来は心を通わせることが難しい存在に、スムーズに感情移入できる補助をしてくれます。知られざる動物たちの世界に驚き、その営みに心を動かされ、いつしか人間の生活と重ね合わせて考えさせてくれるのが、このジャンルの映画の大きな魅力です。

2014年版AKBドキュメンタリーの中で、独特の近い距離感で撮影されたメンバーの姿は、今や巨大な王国であるAKB48を一番小さな単位で見せてくれます。アイドルファンであっても、普通の人であっても、踏み入ることができないその王国の中で、メンバーの目線で語られることは、より身近にAKB48を感じさせる効果があります。そして、やはりAKB48の物語に、自分たちを重ねてしまうのです。

 

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距離に勝るものはない

女性アイドルのライブに行かれる人であれば共感してもらえると思いますが、距離の近さは大きな魅力です。いわゆる“最前厨”と呼ばれる人でなくても、ライブの座席や整理番号に一喜一憂することは誰にでもあることだと思います。

その魅力は単純に「近くで見られるから」だけではありません。グループで活動するアイドルであれば特に、全体ではなく個人を見る楽しさが増すのです。最前が近付くほどに、推しメンや、気になるアイドルの表情や体の動きをより鋭く感じることができ、レスを受け取る(目が合う)頻度も増えます。距離が近付くことで、ファンとアイドルの気持ちの距離感も近付いているように感じさせる効果を生むのです。

2014年版AKBドキュメンタリーはそんなライブ中の感覚を疑似体験させてくれる作品でした。それが名前も知らない女の子であっても、目の前や隣にいるような映像ばかりのこの映画を見ていると、だんだんとその子のことが見えてきて、心が通っているような気持ちになってきます。それは多くが錯覚なのかもしれませんが、映画館のスクリーンでアイドルのあの距離感のドキュメンタリー映像を見ることはそれだけインパクトがあることなのです。この作品の圧倒的な“距離の近さ”はそれ自体がアイドルの映画としてとても価値があるものであり、その距離感だからこそ伝えられるメッセージがあると感じました。

 

 

AKBドキュメンタリーが伝えたいもの

手持ちカメラで撮影された映像は、表情や仕草を映し出し、輝く瞳や大粒の涙を“映画”にし、ひとりひとりの人間的魅力を細かく伝えてくれます。AKB48の世界の内側に観客を連れていってくれ、大組閣や国立競技場2日目の中止といった様々な大波に巻き込まれ、戦い、悩み、ときに勝ち負ける女の子たちの“ありのまま”の姿を見せてくれます。ディテールにこだわったこの作品が見せてくれるものは、AKB48のメンバーの強さの本質であり、それは作品の中で何度も出てくる“家族”という言葉に象徴されています。

同じチーム、同期などAKB48のメンバーは繋がりあっています。SKE48などの姉妹グループもあわせると、大変な大所帯の中で、ひとりひとりのメンバーが仲良しだったり、ライバルだったり、先輩や後輩といった様々な関係性の中にあることが映画を通してよくわかります。大変なとき、辛いときには必ず誰かがそばにいて支えているのです。ひとりで悩むしかないようなことでも、近くに誰かがいるからこそ乗り切れたり、決断できたりしたのだと思いますし、支え合っている姿こそがこの作品の最も見せたいものであり、その姿を見せるためにこの手法なのだと改めて感じています。

 

AKB48関連の話題は連日のように報道されていて、グループに起きている事件や危機的状況はファンでなくても広く知られています。「もう終わりでは?」と思われるようなときにも、AKB48が強くたくましく生き残り、大きくなることができたのは、メンバー同士の支え合いや絆があったからこそなのかもしれません。

映画の中で“家族”と語られる強い関係性が、AKB48を日本一のアイドルグループにしたのだとすれば、それは大きな困難を乗り越え強くなるヒントだと思います。

 

AKB48のブレイク以降、女性アイドルグループは増え続けています。ブレイクしたグループもあれば、パッとしないグループ、返り咲こうとしているグループ、など状況は様々ですが、どのグループにとっても2014年版AKBドキュメンタリーの内容は有意義なものでしょう。人気メンバー、若手メンバー、在籍が長いメンバーなどほとんどのアイドルの視点を見せてくれるこの映画の中には、多くのアイドルにとって共感できること、励みになることが詰まっているはずです。そして、運営方針やグループの方向性が色々ある中で、メンバー同士が支え合い、助け合うことの大切さを教えてくれるこの作品は、女の子たちに「今、頑張る」力を与えてくれると思います。

 

それは、アイドルグループに限ったことではありません。僕たち私たちが生きる上で、生活する中で起きる大変なことと向き合う力にもなってくれます。ひとりで抱え込まないこと、隣にいる人と支え合うことの意味、家族や絆の大切さを、等身大の視点で優しく自然に教えてくれる映画なのでした。

そうして、多くの苦難や困難とリアルタイムで戦っているAKB48だからこそ伝えられるメッセージが込められている作品です。距離の近さも目線に感情移入させる手法も、すべてがそのメッセージのために生きていて、説得力を増している、これは傑作と呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。

 

AKB好き、アイドル好き、映画好きに関わらず、ぜひ今このタイミングで見に行って欲しいと思います。