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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

ちまちまアイドルソング54「踊ろよ、フィッシュ」/つりビット

アイドルソング 音楽

つりビット『踊ろよ、フィッシュ』

 

釣り(フィッシング)をテーマにした5人組アイドルユニット・つりビット、4枚目のシングルが山下達郎のカバーと聞いたときはびっくりしたものでした。

カバー曲を語るせっかくの機会ですし、まずは過去のバージョンのことを考えてみたいと思います。

 

 

『踊ろよ、フィッシュ』は過去に何組かのアーティストによってカバーされています。この動画はそのひとつ、ジェフリー・フォスケットのバージョン。イーグルスのサポートメンバーだったジェフリー・フォスケットが山下達郎のカバーをすることに意味を感じてしまいます。

山下達郎とジェフリー・フォスケットの間に親交があってカバーすることになったのかどうか僕にはわかりませんが、何となく違うんじゃないかと思います。実際は、広告代理店等が主導して仕切って成立させた企画なのかもしれません。生々しい話ですが。

 

そもそも『踊ろよ、フィッシュ』という楽曲は、全日空沖縄キャンペーンのテーマソングとして作られたものです。*1『高気圧ガール』の成功を受けた二番煎じ的な企画であること、キャンペーンガール石田ゆり子がジャケットの特別盤が作られたこと、など企画色が強い楽曲なのです。オリジナルバージョンが作られたのは1987年、まだバブル経済で日本がイケイケだった時代でした。数々の“生々しい”ように感じるエピソードを含めて、『踊ろよ、フィッシュ』は時代を切り取っています。ジェフリー・フォスケット版はその辺も感じさせてくれるように思います。

 

 

1987年のオリジナル版、1996年のジェフリー・フォスケット版に続いて、2004年にはキンモクセイ『踊ろよ、フィッシュ』をカバーしています。キンモクセイの個性が炸裂しているサウンドと、山下達郎をリスペクトしまくっているボーカル&コーラス、このバージョンから受け取る印象はジェフリー・フォスケット版とは大きく異なります。

2004年、バブル経済はとっくの過去の話で、失われた10年の真っ最中でした。聞きたくもないのに聞かされる「昔は良かった」的エピソードに歯ぎしりしながら、でも、うらやましくてバブルがもう一度来ればいいのにと儚く願ってしまう、そんな時代にキンモクセイ『踊ろよ、フィッシュ』を歌いました

キンモクセイ版の『踊ろよ、フィッシュ』から感じるのは憧れの気持ちです。山下達郎という天才音楽家への憧れ、『踊ろよ、フィッシュ』が生まれた時代への憧れです。それは決してポジティブな感情だけではなく、嫉妬や反骨心が込められています。つまり、この曲山下達郎、そして時代や社会への大きすぎる愛とジェラシーがキンモクセイ版の持ち味だと思います。

つりビットが『踊ろよ、フィッシュ』を歌うことに違和感を持ってしまうのは、僕もまたキンモクセイと同じように、あの頃の歌に対して、愛を持っていてジェラシーがあるからなのでしょう。

 

 

奇しくも、キンモクセイ版からちょうど10年、2014年に蘇った『踊ろよ、フィッシュ』を歌うのは、5人の幼い女の子です。それは、膨らんでしまっている曲へのイメージと、大御所となってしまった山下達郎という音楽家、そして僕たちが抱えている愛とジェラシーの形からほど遠いものです。

一方で、元々はCMソングだったことを強烈に思い起こさせてくれます。MVで表現される「海辺と旬の少女たち」というコンセプトは、全日空沖縄キャンペーンそのままです。見ていると海に行きたくなってきます。

つりビット版は「原点回帰」または「リブート」と呼ぶのがふさわしいものなのかもしれません。オリジナルバージョンのBPMが約120だったのに対し、つりビット版のBPMは約140と随分速くなっていて、オリジナルバージョンが豪華メンバーによるバンドだったのに対し、つりビット版は打ち込みとギターによるミニマムな編成です。楽曲のテーマそのものに真摯に向き合って、その上で、踊ろよ、フィッシュ』を現代にふさわしい形として蘇らせたバージョンだと僕は思います。

 

アイドルやJ-POPがカバー曲を歌う場合は、どうしても懐メロに引っ張られてしまいます。その方が、当時を知っている人にも受け入れてもらえるかもしれないという考えによるものかもしれませんが、そこに現代の視点が含まれているのか、クリエイティビティを感じることができるのか、とても大事なことです。

 

つりビットの踊ろよ、フィッシュ』には、現代に歌う意味もグループの色もあります。安易なカバーでは決してないこの曲を、願わくば、この夏だけの歌ではなく、何年経ってもライブで聞いて変化を楽しみたいものです。

そして、これからも歌い継がれるであろう踊ろよ、フィッシュ』のマスターピースのひとつとして残っていくことでしょう! いい曲でした!

 

 

踊ろよ、フィッシュ(初回生産限定盤)(DVD付)

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踊ろよ、フィッシュ(A)

踊ろよ、フィッシュ(A)

 

 

*1:この曲のWikipediaが詳しくて勉強になりました。

踊ろよ、フィッシュ - Wikipedia