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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

チームしゃちほこ1stアルバム「ひまつぶし」のこと

2013年6月『首都移転計画』で日本メジャーデビューした、スターダストプロモーション芸能3部「3Bjunior」所属の名古屋在住6人組アイドルユニット・チームしゃちほこの1stアルバムがリリースされました。

 

 

クイックジャパン的サブカル層の関心、ミュージックマガジン的音楽好きの興味、そして、ももいろクローバーZの妹分としての注目など。今、チームしゃちほこほど多くの視線が寄せられているグループも多くないでしょう。それには、『首都移転計画』『愛の地球祭』『いいくらし』と、変化球かつクオリティの高い楽曲をリリースし続けてきたことが背景にあります。ある意味で、最初の集大成である1stアルバム『ひまつぶし』ではどんな“新開発の変化球”を見せてくれるのか、僕もとても楽しみにしていました。

一方で、アルバムを通して感じたものはそういう期待とギャップがあるものでした。

 

 

変則的な自己紹介ソング1曲目『SPACEひつまぶし supported by ZEN-LA-ROCKや、インディーズデビュー曲恋人はスナイパー以降の浅野尚志楽曲のひとつの到達点であり最高傑作と言える3曲目『抱きしめてアンセム』千原ジュニアを作詞に抜擢した雑学アイドルソングという新ジャンルの4曲目『んだって!!』など“チームしゃちほこらしい変化球ソング”を惜しみなく聞かせてくれます。ぶっ飛んだ楽曲っぷりは『首都移転計画』『愛の地球祭』『いいくらし』がおとなしく感じるほどでした。コロコロと曲調が変わる7曲目『アイドンケア』はもはや“王道の変化球”と呼ぶべきもので、個人的に最もチームしゃちほこらしい曲だと感じました。

そうした“変化球”が色んな意味で絶頂に達するのが8曲目『味噌Blood』です。1stアルバム『ひまつぶし』を聞いた人なら、誰もが話題にしたくなること間違いなしのこの曲は、もはや音楽として成立するギリギリのライン上を狙って作られています。そして、また、アルバムを通して感じる印象もまさにそんなギリギリのライン上的な感じでした。

 

多くの視線が寄せられていることをわかっていながら、『ひまつぶし』を作った大人たちはその視線をあえて無視しているように思えます。「こんなアルバムが聞きたい」「新しい音楽が聞けるはず」「新曲でライブで盛り上がりたい」視線と共に寄せられる多種多様で大きな期待を耳に入れながらも、そうした人たちの方を一切見ないで作られた、そんなアルバムなのだと思えます。

 

では、集まる視線から世界を閉じ、視野を狭くしながら、『ひまつぶし』を作った大人たちはどこを見ていたのでしょうか。それは、収録される楽曲です。ひたすらに楽曲を鋭くすることに力を注ぎ、曲ごとに「音楽としてアリか、ナシか?」「ここまで攻めて大丈夫か、大丈夫じゃないか?」を悩みながら検討して“ギリギリのライン上を狙った”大人たちの姿が、アルバムを通して聞きながら僕には見えてしまいます。

周囲の視線や期待の声とは線を引いて作品を作るそんな姿勢からは、「用があるのなら そちらから会いに来て下さい」という日本メジャーデビュー曲『首都移転計画』の精神そのものを感じることができ、それこそがチームしゃちほこの初心であり、誇りなのです。

 

そんな誇りを持ち、自信を持って作品を作ることができる理由は続く楽曲たちが教えてくれました。

BaseBallBear小出さん提供による9曲目『colors』でのストレートでエモーショナルなロック性、チームしゃちほこ初のオールユニゾン歌唱による10曲目『明け星』の王道アイドルソング性、ベートーベンの第九を大胆にサンプリングした11曲目『よろしく人類』の壮大さと普遍性、それぞれを成立させているのはチームしゃちほこの6人の個性であり、才能以外にありません。

チームしゃちほこの楽曲が突飛であり変化球なのは、6人の個性と才能が圧倒的すぎて、普通の楽曲では受け止めることができないからなのではないかと思います。メンバー6人に負けないように楽曲はどこまでも鋭さを要求され、どんなに“ギリギリのライン上”でも楽曲が成り立って魅力を放つことができるのもこの6人だからなのです。

 

 

チームしゃちほこをずっと近くで見てきた浅野尚志による12曲目カントリーガールの歌い出しの歌詞は「おかえりなさーい!!」です。これから成長し続け、今とは違う形に変化してしまったとしても帰る場所があること、心はひとつで繋がっていることを歌うこの優しい歌は、そんなメンバー6人の絆の強さへのエールなのだと感じました。

チームしゃちほこにはいつでも名古屋という帰る場所(ホーム)があること。個人個人は別々の個性を持っていてもチームしゃちほこはひとつであること。カントリーガールチームしゃちほこがいつまでも頑張れるようにという、自身への応援歌でもあるのです。

 

アルバム最後の曲である13曲目『乙女受験戦争』は、2012年の12月に発表された収録曲の中で最も古い楽曲です。7777枚会場限定でリリースされたCDに今ではプレミアが付いています。受験というティーンエイジャーにとって最も必死で一生懸命な戦いを歌ったこの曲は、ゴールがあって明確な勝敗がある、現行アイドルシーンのメタファー(一種の比喩)として受け取れます。そんな曲がアルバムの最後に収録されていることから、「俺たちの戦いはまだまだ終わらない!」という、チームしゃちほこが戦い続けること、もっともっと大きくなっていつかお姉さんを乗り越えること、そんな決意を感じました。

 

1stアルバム『ひまつぶし』に続いて、8月28日には初の武道館公演が決定しているチームしゃちほこにとって、集大成という言葉は不十分なのかもしれません。ひとつひとつチャレンジすることを辞めず、普通であることを嫌がり、ファンに驚きと楽しさをいつまでも与えてくれる。常に刺激的で、魅力的であることがチームしゃちほこの輝きなのです。