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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

ちまちまアイドルソング59「アゲハ今」/Party Rockets

Party Rockets『アゲハ今』

アゲハ今

アゲハ今

  • PartyRockets
  • J-Pop
  • ¥250

蝶をモチーフにした最近のアイドルソングは、私立恵比寿中学バタフライエフェクト』、Juice=Juice『ブラックバタフライ』と続いています。どちらもまったく違うアプローチの楽曲で、蝶を楽曲にすることには幅広さと奥深さがあるように感じます。

 

蝶のポップソング

  • ヒラヒラと宙を舞う自由な存在としての蝶
  • 幼虫からサナギを経て鮮やかな姿に変化する存在としての蝶
  • 捕まえられない、または、弱く繊細な生き物のメタファーとしての蝶

蝶を扱ったポップソングを大別すると、この3つに分けられるように思えます。

例えば、和田光司『Butter-Fly』やV6『蝶』、SOULSCREAM『蜂と蝶』などはヒラヒラとゆらりゆらりと舞う蝶の自由な姿を歌った曲です。そこでは、世俗のしがらみや生き辛さを飛び越える希望として蝶が描かれていて、その軽快さや可能性は蝶をモチーフとすることでしか得られないものです。

倖田來未『Butterfly』や木村カエラ『Butterfly』などでは、姿が変わる、化ける存在としての蝶が歌われています。それは、どちらかと言えば抑圧されている姿であり、美しくなる可能性を秘めた姿です。現状から成長し離れる変身願望の象徴として蝶が使われています。そこでも、抑圧された存在からの解放という意味が込められています。

ポルノグラフィティ『アゲハ蝶』やPerfume『Butterfly』、Acid Black Cherry『蝶』などでは、蝶がメタファー(一種の比喩)として使われています。ついつい手を伸ばしてしまいながら簡単には捕まえることができない在り方や、他の昆虫と比べて弱く捕食される側の生き物である蝶は、憧れや弱さの象徴として歌われます。

共通する要素として「現状からの脱却」という意味がありつつも、様々なテーマを含むことができる蝶というのは、音楽にする面白みが多く、作り手の力量が問われる難しい内容なのだと思います。

 

『アゲハ今』のオリジナリティ

そんな分類を考えながら『アゲハ今』を聞いていくと気付くことがあります。

「昨日と違う 何かが違う」

「成長してる いろんなとこが」

「壁の中で サナギの時間がうごめいてるの」

『アゲハ今』で扱われているのは“幼虫からサナギを経て変化する存在としての蝶”の姿が最も近いように思えます。同時に、『アゲハ今』では現在進行で変化していく“少女の姿=蝶”とされていてメタファーの役割も持っていて、空を羽ばたく自由な生き物の姿も暗示されています。変化を中心に置きつつ、先行する蝶を歌ったポップソングの要素を持ちつつ、フレッシュなイメージを提示している楽曲なのです。

「ガンガン 夢を見て ガンガン 欲しがるの」

「ガンガン 恋をして ガンガン 綺麗になる」

「ガンガン 輝いて ガンガン 愛されたい 」

一方で、サビの歌詞にあるような「ガンガン」前のめりに攻める姿勢は、蝶のイメージにはあまりなかったものです。むしろ、蝶とは「ヒラリヒラリ」「ゆらりゆらり」と風の影響があって、ある面で受動性を感じさせる存在であるはずなのですから。

このギャップにこそ、『アゲハ今』の新しい部分があり、考えるべきテーマが隠れているのかもしれません。

 

age派、今

今、アゲハ蝶を語る上で外すことができないものとして、先日休刊となった『小悪魔ageha』という雑誌があります。“キャバクラ嬢の教科書”と呼ばれたこの雑誌が提示していた“アゲハ系”というライフスタイルは、“ageモ/age嬢”と呼ばれるモデルを中心にその時代の女性たちの多くに新しい可能性を提示していたと言われています。

“アゲハ”は“揚羽”であり、そもそも「羽が揚がる(アガる)」ことを意味していました。そうした語源を尊重しつつ、『小悪魔ageha』以降の時代の言葉で表現するなら「age派」と呼ぶことがふさわしいでしょう。

「age派」という言葉の語感と「ガンガン」という『アゲハ今』の積極的な感じは重なる部分を感じることができます。『アゲハ今』で歌われる蝶の姿こそが、現代にフィットした、最新型の蝶の表現と言い切って良いと僕は思います。

「そんなの言葉遊びだろう」と思う人もいるかもしれません。でも、『アゲハ今』というタイトル自体が「〜〜なう」というTwitter文化から生まれたものです。言葉遊びであることは『アゲハ今』という楽曲のアイデンティティであり、「age派、今」として読み取ることも決して的外れではないはずです。

 

 

そんなこんなで、『アゲハ今』は蝶をモチーフにしたポップソングに最新の要素をたして、アップデートした楽曲です。

 

フレッシュで、きっとこれから蝶を歌うときに引用されるこの曲をぜひ聞いてみてください!

 

 

アゲハ今

アゲハ今