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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

日本語ラップを聞かない人のための「The R 〜The Best of RHYMESTER 2009-2014〜」特集 その1

音楽 RHYMESTER

 本日2014年9月24日! RHYMESTERのベストアルバム『The R 〜The Best of RHYMESTER 2009-2014〜』(以下、The R)が発売!
 
 何となくいつもこのブログを読んで下さってる皆さんは、RHYMESTER日本語ラップをあんまり聞かないんじゃないかと思います(違ったらすみません)。
 いや〜、もったいないですよ!! こんなに楽しいジャンルないですから!!

 そうは言っても、僕も日本語ラップ好きになったのは最近の話です。ラジオ番組『TBSラジオ ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』聞き始めてからなので、ここ4〜5年のことです。ちょうどそれは、今日紹介するベストアルバム『THE R』に収録されてる曲がリリースされた期間と重なります。
 そこで今回は、『THE R』収録曲の好きなヴァース(歌詞)を紹介しながら、思い入れを語ってみたいと思います。日本語ラップ聞いたことない人の入口としてRHYMESTERの魅力が伝われば、興味持ってもらえれば嬉しいです。

ONCE AGAIN

「夢」別名「呪い」で胸が痛くて

 このヴァースは、『仮面ライダー555』第8話からの引用です。かつて天才ギタリストだった登場人物が事故により夢を断念しなければならなくなり、「夢を持ち、途中で挫折した人間は呪われているのと同じ」という意味で使った台詞が元ネタです。
 『仮面ライダー555』は大学時代に見ていて、1番ハマった平成ライダーでした。その中でも、第8話のことはよく覚えていて、「夢=呪い」という考え方のことをなるほどと思うと同時にショックを受けていました。だから、『ONCE AGAIN』でこのフレーズを聞いたときは、すごくびっくりしました。
 『ONCE AGAIN』の宇多丸さんのヴァースはひとつなぎの映画のような構造を持っています。挫折して、それでも夢を諦めることができず、自分を奮い立たせるまでの物語。
 RHYMESTERのラップは勝者の言葉では決してありません。いつだって勝てない人の視点で、でも、諦めなければ勝つことができることもあることを歌っています。だから、優しく、心惹かれるのです。

K.U.F.U.

声が 無いならリズムで勝負 リズムが無いならイズムで勝負

 『K.U.F.U.』つまり「工夫」のことを歌った曲の極意を歌った一節。少年漫画的な男らしさ、カッコ良さがあるように思えます。天才に凡才が勝つために、「持ってる」人に「持ってない」人が泡を吹かせるために、唯一の切り札です。それは、RHYMESTERの精神そのものであり、多くの「持ってない」人の希望の言葉です。

あのウサギとカメの例のレースは教訓としてはアレなケース

 これは宇多丸さんのヴァースですが、こういう「売らなくていいところに喧嘩を売ること」「不必要な例え話」ところがお気に入りです。(最近だとParty Rockets『KASABUTA』での向日葵のくだりも同様の好きさです。)でも、実際カメやウサギと人間を安易に比べるなとは僕も思います。笑
 『K.U.F.U.』はRHYMESTERの中でも、特にキャッチーでポップで聞きやすい曲だと思います。その中で、みんなが知っている『ウサギとカメ』のモチーフと相乗効果でビギナーにも刺さる曲になってると思います。

Come On!!!!!!!!

毎週末 怪電波上でHELLO! 中身はキミの見で確かめろ

 日本語ラップの楽しさのひとつに身内感があります。キャラが立ったラッパーが身近な話題や、パーソナルなことを詞にすること。内輪に入っていくと楽しさが増すことを教えてくれたのが『Come On!!!!!!!!』であり、このヴァースでした。
 毎週、宇多丸さんのラジオを聞いていると入ってくる最近のトピックスや考え方があって、その延長線上にRHYMESTERの楽曲があります。ラジオを聞けば聞くほどRHYMESTERの曲が好きになり、RHYMESTERの曲に触れれば触れるほど宇多丸さん、Dさん、JINさんが好きになります。
 RHYMESTERの音楽、日本語ラップの楽しさは、人間の魅力そのものです。「誰が歌っているか」がすごく大切な要素です。そして、もちろんそれは日本語ラップに限ったことではありません。作品を作っている人が誰でどんな人なのか、注目することで受け取れるメッセージがあることを知ることができました。  

ラストヴァース

紙に書き留められた気の触れたラブレター

オレのマイクロフォン キミのヘッドフォン 髪のように細いコネクション
もし 音の女神が許すなら 淡いシグナル送るぜブースから

 アルバム『マニュフェスト』の最後を飾るRHYMESTERの代表曲は炎のような熱を持っています。「何か」を成し遂げたことを歌っているわけではなく、勝利と敗北の間で「何か」になろうとしている瞬間を切り取ったこの歌には、「不屈」という言葉がよく似合います。
 そして、ワンループ構造のバックトラックに合わせて、力強く、自分自身の心に訴えかけるようなこのヴァース。何よりも、詩的ではありませんか。ぜひ聞いて欲しい曲のひとつです。

ちょうどいい Piano session with SWING-O

街のそば屋のマズかないがうまくもないそば手繰り生あくび(ちょうどいい)

 前に、「RHYMESTERほど『ちょうどいい』HIPHOPアーティストはいない」という評論をどこかで読みました。偏見の一部になっている強面ラッパー的にハードコアすぎることもなく、嘲笑の対象になっているチャラいラッパーほど軽すぎることもないという意味です。
 HIPHOP日本語ラップに興味を持つと、それぞれのスタンスの楽しさにも気が付きます。ハードコアなのもライトなのも受け入れる、振り幅が大きなジャンルだからこそ魅力があると今は思います。でも、どう振れても楽しめるまでにはハードルがいくつかありました。
 歴史が浅いながらも、多様な日本語ラップの世界。その入口にふさわしいアーティストがRHYMESTERです。彼らのニュートラルなスタンスは、日本語ラップの様々な楽しさの縮図であり、まさしく『ちょうどいい』案内人として、新しい世界を見せてくれることでしょう。

Walk This Way

そのままの君でいて」なんて歌わないぜ 昨日より今日のが倍マシ

 かつて履歴書の「座右の銘」欄に「いつも現状不満足」と書いていたことがあります。飽きっぽいくせに凝り性で、背伸びしたがりな僕自身への応援歌みたいなフレーズだと思いました。
 同時にRHYMESTERの最も大事なスタンスのひとつです。人と違うこと、過去の自分と違うこと、昨日より前に進んでいること。個性やオリジナリティを持ち続けるために、工夫と差別化を絶やさないことがRHYMESTERらしさそのものです。
 つまり、自分を甘やかす「ありのまま」ではなくて、挑戦をやめないことがRHYMESTERの「ありのまま」なのです。


(つづく)


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