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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

本当にらしくない? らしい?:ちまちまアイドルソング72「らしくない」/NMB48

 NMB48の10thシングルは、初めて矢倉楓子白間美瑠がWセンターを担当するチャレンジングなものになりました。一方で、NMB48「らしさ」とは何なのか考える事ができる楽曲です。


『らしくない』サウンド

 ホーンセクションが印象的なイントロはとても元気な曲です。歌に入るまでの“タメ”の感じを聞いていると、NMB48の楽曲を聞いている気分が高まって、ワクワクするのは僕だけではないでしょう。
 1stシングル『絶滅黒髪少女』のミステリアスさ、3rdシングル『純情U-19』のバブル的なゴージャスさ、6thシングル『北川謙二』の前のめりさ、8thシングル『カモネギックス』のケレン味、挙げるとキリがないくらいNMB48の楽曲には「らしさ」があります。バラバラなようで共通点があって、うまく言葉にできないそれは、『らしくない』のイントロが持っている“タメ”の感じそのものです。
「これぞ浪花節」と言うのがオーバーじゃないくらい、NMB48ならではのサウンドが確実にあって、大阪在住のアイドルの音だと思うと納得できます。『らしくない』はそれを感じさせてくれる楽曲です。

『らしくない』歌詞

 HKT48『控えめI LOVE YOU』のときにも書きましたが大事なことなので繰り返していきたいと思います。
 48グループの歌詞には“いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうして、どれくらい(いわゆる5W2H)”が超具体的に練り込まれています。それによって、まるでショートムービーのような物語性が歌に閉じ込められていて、小説を読むように行間を考えながら聞くことで本当の楽しさを感じることができます。他のアイドルグループの楽曲以上に、じっくり歌詞を読み、繊細に世界に浸ると楽しくなるのです。
 では、『らしくない』ではどうでしょう。歌詞の中に「冷静さを失ってる自分」とあるように、この曲の主人公は抑え切れない感情を持ってしまいました。そうなってしまった原因は恋愛感情で、「君のこと想うだけで」「情熱のドーパミン」が止まらなくなってしまった様子が歌われています。
 歌詞の譜割りも独特です。ひとつの音譜に2音3音の言葉が当てられています。歌のリズムでは、強迫と弱拍のパターンを変化させる“シンコペーション”が多用されています。
 譜割りとリズムの相乗効果によって、楽曲がハイテンションに感じられ、同時にどこか不安定な印象を持ちます。それらは、抑え切れない自分を歌った歌詞とすごくマッチしています。
 その感情は、熱病のように突発的に生まれたものに過ぎず、高揚感と底知れない不安を行き来するものです。そんな決して単純ではない感情を歌詞と歌割り、リズムで見事に表現する工夫がこの曲にはあります。

NMB48「らしさ」

「今までの僕とは違う」と歌われているように、『らしくない』とは本人の中にあるものに過ぎません。仮に他人から見れば「そういう奴」に過ぎないとしても、世界中で本人だけが「自分らしさ」だと思っているものが誰しもあるはずです。
 分かりやすく明るく前向きなサウンドと、不安定で繊細な歌詞の両方をこの曲は持っています。独りよがりで、どこか調子に乗っていながら、果てしなく不安な心情で、それはきっと誰もが経験するポジティブとネガティブを行ったり来たりする、恋愛のはじまりの季節です。まだ自分の殻の中にとどまることができていて、ある意味で最も無条件に幸せなひとときです。
 ともすれば、もっとセンチメンタルに歌われていてもおかしくないテーマです。それを、全体の印象としてポジティブさが勝つバランスで、明るく、コミカルな楽曲としてまとめています。これこそが、NMB48「らしさ」なのだと思います。どうなるか分からない今だからこそ前向きな方が良い、そんなメッセージが根っこにある楽曲で、グループです。
 聞き込めば聞き込むほど、楽曲の世界に没入できて、味わいが増し、好きになるはずです。ぜひ、どうぞ!