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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

圧倒的なデザインセンスと謎のモチベーションが生んだ異様で直球の名盤:つりビット1stアルバム「フィッシングライフ」

アイドルソング 音楽 つりビット

 タイトルのロゴはキラキラ輝く水しぶき。メンバーは水玉のトップスと海がデザインされたスカート。そして、背景は波しぶきが激しい磯。普通はこんなことしないだろうというくらいに幾多も水や海のモチーフが重ねられているこのジャケットデザインがぶっとんだ傑作の全てを語ってくれているのかもしれません。

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ジャケ写のこと

 CDを手にしてあらためてジャケ写を見たとき、PCやスマホで画像を見たときの5割増しくらいの熱を受け取りました。クラクラしました。なるべく伝わるように大きめの画像を貼りましたが、ぜひ手にして見てみて欲しいです。5人のアイドルらしい笑顔が素敵で、でも水と海の記号表現が過剰で、上手いんだか雑なんだかよくわかりません。圧倒的なデザインセンスと謎のモチベーションで「なし」なものを「あり」にさせられているような感じです。

「釣りに打ち込むことを誓った少女たちで結成されたアイドルユニット」という説明や、「いつか世界を釣り上げます」というキャッチコピー、実際におこなわれた海釣り漁船イベントなど、結成以来、つりビットは予想の斜め上をいくアイドルグループとして僕の中で有名でした。
 100歩譲って釣りをするアイドルは飲み込めるとして、総合プロデュースが坂本龍一とも関わりが深い音楽家で仙台でテクノポップグループ・テクプリも手がけたトベタ・バジュンさんという食い合わせは謎ですし、JC中心のメンバー構成(しかもかわいい)も腑に落ちるものではありません。誰がどうして何の目的でこの規模のバジェットでやっているのか、不思議で仕方がありません。
 そんなこのグループの不思議さ、斜め上さ、誰得感、存在理由。その本当のところはわかりませんが、根っこにあるものはこのジャケ写と同じだと思いました。それが圧倒的なデザインセンスと謎のモチベーションです。ちょっとでも下手な人がやっていたら、やる気がない人が関わっていたら、もっと駄目でちゃんと悲惨なグループになっていたに違いありません。

 つりビットが今の形で存在していることそれ自体がある種の奇跡と言っていいでしょう。それは誰が得をするのかわからない奇跡です。少なくとも僕のところにはすごさの1割くらいしか伝わってないのかもしれません。それでも、このジャケ写、そして収録曲からは伝わる圧倒的な何かの熱、異様な存在感、アンビバレントな魅力が強烈に心に響いてしまいます。

収録曲のこと

 DVD付き初回生産限定盤の収録曲は全17曲。前半と後半で大きく2ジャンルの歌を聞くことができます。釣りソングと恋愛ソングです。

 1曲目『Go! Go!! Fishing』の「落ち込む嫌なことは釣りが解決してくれる」という前向きなんですが何だかよくわからない感じがすごくつりビットらしいです。2曲目『ひまなつり』(ひなまつりじゃない)はトリッキーな曲名の10倍はトリッキーというかクレイジー。曲の終わりに向けて「ひな祭りは暇な釣り」と繰り返しがくどいの本当に最高ですし、五人囃子とか何気に綺麗に歌詞に収めているあたり小憎たらしいです。
 箸休め的に3曲目『スタートダッシュ!』を置き、『FISH ISLAND』『おさかなソング』『寿司パラダイス』と並んだ曲名を見ただけで何かの新境地が覗けそうな予感がするのではないでしょうか。特に『寿司パラダイス』はもっと広く世間に知られても良い曲だと思います。初期Perfumeさくら学院的なポップさがあります。また、この3曲は「釣りたい→食べたい→寿司がいい」という流れ的にも考えられています。なんなんでしょうほんと。笑
 7曲目『ズキズキ物語 〜恋のハロウィン大作戦〜』はミュージカル仕立てと言っていいのかどうか悩むくらい異次元のアイドルソング。とにかくはんぱない...


 後半は恋愛ソング。8曲目『告白スイッチ』はひとつ前の曲の余韻を良い意味で洗い流してくれる清涼感があります。9曲目『旅立ちキラリ。』は3rdシングルのタイトル曲でもあります。本当に素晴らしい楽曲で、初々しさもありつつ、アイドルソングの定番になってもおかしくない風格があります。内側から熱が伝わるような不思議な魅力です。10曲目『真夏の天体観測』と11曲目『ラムネ色のスケッチ』はどちらもサマーソングで、夏の最中と終わりを歌った兄弟のような曲です。散文的な歌詞とサウンドのバランスが絶妙で、歌詞カードを読みながら曲の世界に浸ってしまいます。「シーサイドメモリー」のリフレインと曲の(夏の)終わりに落涙級のセンチメンタルがあります。
 12曲目『バニラな空』で季節は冬に。雪の季節にぴったりな歌詞と、夏の曲より少しだけ大人っぽいサウンドは時の流れと少女たちの成長を見事に表現しています。13曲目『キメキメクリスマス』は転調を多用する今どきなアイドルソングでありつつ、メリハリが効いたバンドサウンドで盛り上がるパーティーチューンで、後半に向けてびっくりするくらい王道なクリスマスソングに着地する怪作です。

 14曲目『恋のマジカルスイーツ 〜あなたの恋叶えます〜』はミニストップのタイアップソングとしても使われていました。歌詞がキュートで楽しくキャッチーで耳に残ります。釣りなのかデザートなのかとかその程度のことではもう驚きません。笑
 15曲目『ムーンライトキッス』はアルバムの中でも特に大人っぽい楽曲です。緻密なコーラスや複雑なバックトラック、繰り返されるサビの感じなど80年代ポップソング感があり、16曲目『踊ろよ、フィッシュ』に曲が切り替わったときにブリッジとしての名仕事に感嘆してしまいました。『踊ろよ、フィッシュ』は最近CMで元バージョンが流れてますが、ノスタルジーだけでなく今の曲として魅力を増幅させている分、やっぱりよくできたカバーだと思います。これはこれでポップソングのクラシックとして残っていって欲しいです。
 最後17曲目は初回生産限定盤だけに収録されているボーナストラック『真夏の天体観測 〜Next Summer Eddition〜』で、ちょっと笑っちゃうくらいアレンジが派手になっていました。カーテンコールとして楽しくて良いです。

直球のラブソング

 コミカルな印象の釣りソングと、王道で真面目な恋愛ソング、つりビットの両面が楽しめるアルバムです。その中で、1曲1曲にオリジナルなプランがあって、独立した世界があります。歌詞を読み込んでも、目を閉じてサウンドに浸っても、ドライブや作業のBGMとして、好きなように楽しめる間口が広い作品だと思います。
 そして、釣りソングも恋愛ソングも突き詰めていけば、共通したテーマがあります。どちらも「好き」という気持ちについて歌っていることに違いはないのです。呆れて口が開いてしまうような『ひまなつり』は「なにより好きな釣り」の歌ですし、想いの強さという点で『告白スイッチ』の純粋さ、『ラムネ色のスケッチ』のセンチメンタルと近しい歌です。
 釣りソングと恋愛ソングという二面性、1曲1曲それぞれの世界観。アイドルソングや娯楽音楽としてさまざまな手法を尽くして表現されているのは、これ以上無いくらい純粋な「好き」の気持ちでした。ここまでトリッキーで、やっぱりクレイジーで、でもファニーで、ストレートなラブソング集はあまり聞いたことがありません。
 もし、つりビットや釣りのことがわからなくても好きじゃなくても、打ち込むものがある人であれば、特別な誰かがいる人ならば、ぜひこのアルバムを聞いてみてください。きっと、ちょっと変わった作品に共感して、ポジティブな気持ちになるはずです。
 好きな趣味があること、誰かを好きになること。「好き」って気持ちは強く、明るく、素敵なものだということ。つりビットの得体の知れない魅力に引き付けられながら、すごく前向きなメッセージを僕は受け取りました。


↓ぜひお手元に! ジャケ写の熱的に初回盤で一択です!

フィッシングライフ(初回生産限定盤)(DVD付)

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Fishinglife

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