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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

全曲レビュー・Dorothy Little Happyミニアルバム「circle of the world」特集

circle of the world (CD+Blu-ray Disc)

circle of the world (CD+Blu-ray Disc)

 Dorothy Little Happy(ドロシー)がミニアルバム『デモサヨナラ』をリリースしたのは2011年3月のことでした。あの震災が重なり、思うように活動をすることもできず、それでも、だからこそドロシーは音楽を届けることを諦めませんでした。そして、同年8月に初出場したTOKYO IDOL FESTIVAL2011では「好きよ」「オレモー!」のコール&レスポンスと共に、ドロシー旋風を巻き起こしたのでした。
 今から思えば、それは小さな風でした。しかし、猛烈な風でした。今もその風は生きていて、ドロシーは新しい風を起こし続けてきました。もちろん、本日リリースされた最新ミニアルバム『circle of the world』が、新しい風を感じさせてくれることは言うまでもないことです。

インマイライフ・フォーマイライフ

インマイライフ・フォーマイライフ

インマイライフ・フォーマイライフ

  • Dorothy Little Happy
  • J-Pop
  • ¥250

 三拍子と四拍子が入り混じった曲調が面白いです。舞踏音楽のリズムとして使われる三拍子を使うと「安定しない=動きやすい」感じがします。反対に、四拍子は最も汎用されているリズムであり、安定感を生み出し、強弱の付け方で豊かな表現を可能にします。こういう変拍子や「in my life」という歌詞からBeatlesへの思いを感じてしまいますが、その辺はどうなのでしょうか? ミニアルバムを聞いた人に今までと違うドロシーを印象付けることに成功した1曲です。

週末だけのロミオとジュリエット

週末だけのロミオとジュリエット

週末だけのロミオとジュリエット

  • Dorothy Little Happy
  • J-Pop
  • ¥250

 収録曲の中で特にキュートでポップなサウンドが耳に残ります。作詞は歌手の永井真理子さん。『ASIAN STONE』『恋をしてるのきっと』でもクレジットされていました。女性らしく繊細な心情を描いた歌詞で、加えて、今作では大人の女性特有の重さが感じられます。個人的に最後のフレーズにはゾワっとしましたし、そのつもりで聞くと、ちょっと怖い歌です、僕には。笑。ドロシーにとっても、女の人にこそ聞いて欲しい1曲なのかもしれません。

Breaking through

Breaking through

Breaking through

  • Dorothy Little Happy
  • J-Pop
  • ¥250

『Breaking through』と次の『シークレット』はリーダーの白戸佳奈による作詞となります。早坂香美をイメージしたという歌詞は、ほんとうに彼女のイメージにぴったりだと思いました。積極的で、いい意味でクセがあって、聞いていて体のどこかからパワーが湧いてきます。ロック色が強いサウンドもよく合っていて、ライブで聞いて感じたい1曲です。

 

シークレット

シークレット

シークレット

  • Dorothy Little Happy
  • J-Pop
  • ¥250

 歌詞カードに「Words by Kana Shirato」と書いてあるのを見ると、やっぱりドキドキしてしまいます。歌やダンスなどなどドロシーには好きなところがたくさんありますが、やはり彼女の書く言葉が特別に好きです。それは作詞においても例外ではありません。『シークレット』はダジャレ好きの白戸佳奈らしいというか、耳を引く言葉のチョイスやライミングが楽しい1曲です。テクノポップよりのサウンドにも遊び心があって、Perfumeの『シークレットシークレット』的なニュアンスを感じられるのも、また良いです。

 

Winter Joy

Winter Joy

Winter Joy

  • Dorothy Little Happy
  • J-Pop
  • ¥250

 作詞・作曲・編曲は風味堂のベーシスト鳥口JOHNマサヤさん。懐かしさと今どきさを両立させているサウンドで、ドロシーの楽曲に新しい風を吹き入れています。一人称が"ボク"であり、ミニアルバム『circle of the world』の中で唯一、男性視点の歌になっています。それが収録曲を流れで聞く上で、面白いつながり感と奥行きを持たせてくれています。例えば、『Winter Joy』では「今は何も解らないキミの気持ち知りたいよ」なのに対して、『週末だけのロミオとジュリエット』では「もっともっともっと教えてあげたい」、『シークレット』では「教えないよ キミが解くの 心模様はサンライズ」と、ミニアルバムを聞き込んでいくほどに、何かが明らかにすれ違っていることに気付かされます。

Singing

Singing

Singing

  • Dorothy Little Happy
  • J-Pop
  • ¥250

 こちらも作詞は永井真理子さん。『週末だけのロミオとジュリエット』では歌の世界を演じきっていましたが、『Singing』ではボーカリスト・高橋麻里の等身大の姿、憧れ、信念そのものが歌になったような楽曲です。それはきっと永井真理子さん自身も持っているもので、歌い手としての気持ちを重ね、託しているに違いありません。生の歌声で聞きたい1曲です!


※ここから長いです・・・

Dorothy Little Happy / それは小さな空だった - LIVE EDIT- - YouTube

 

それは小さな空だった

それは小さな空だった

それは小さな空だった

  • Dorothy Little Happy
  • J-Pop
  • ¥250

 ドロシーにとって『デモサヨナラ』は名刺代わりの1曲です。ある程度のアイドルファンであれば知られていて、愛され、ファンを越えて届いていることでしょう。簡単に書いていますが、名刺代わりの曲があるアイドルは数えるほどしかいません。知名度やキャッチーさ、曲自体の持つ普遍的魅力など『デモサヨナラ』の名刺としての価値は計り知れません。

「恋は盲目」というほど大袈裟なものでなくても、何かを好きになると周りが見えなくなるものです。音楽、PC、文章を書くことなど、対象がモノや行為であればその盲目性は一方通行です。でも、対象がアイドルや異性、恋人などになると状況は大きく変わります。気持ちが重なり、思いがぶつかることで、関係性が強くなり、2人の世界が閉じていきます。あなたの「好き」と誰かの「好き」がどんどん結びついていき、「好きよ」と「俺も」だけの世界ができあがるのです。そんな盲目性、閉じた世界観をライブで具現化させているのが『デモサヨナラ』です。それは、アイドルとファンという関係にもそのまま当てはまり、ドロシーのファン以外にも『デモサヨナラ』が響いている理由でしょう。そして、『それは小さな空だった』は、まさしく『デモサヨナラ』の未来にある曲です。
 
 終わってしまう2人の離れてしまった心を歌ったこの曲は、決して、悲恋の歌ではありません。悲しいだけ、切ないだけ、泣けるだけの歌ではありません。とても言葉では表現できない、でも、誰もが経験する複雑な感情を歌にした曲です。それは「空」という言葉で表現されています。
 歌詞の中に「空」が出てくるのは2ヶ所。「それは小さな空だった あなたと私だけの 守っていこうと決めた春の朝」「季節は巡り 広がり始めた空」です。時間経過や季節の移り変わりを示しているのと同時に、「空」があるものを暗示しています。それは「可能性」です。
 遠距離恋愛中の2人が2人でいるために、あるときは無意識に、あるいは当然のこととして、自分たちに制限を課していた2人。それが徐々に変わっていき、制限は我慢の色を帯びてきてしまい、終わりの影を帯びます。そうして2人の世界は終わってしまうのに、空は広がっていく。終わりへ向かう物語を、まだわからない未来に続くものとして提示している。そうして前に進む悲しさと前向きに生きる寂しさを同時に持つ楽曲となりました。言葉を超えた感情を呼び起こすのです。
 同時に、遠距離恋愛をメタファー(一種の比喩)として、一般的な恋愛、恋人同士だけではない関係性にも置き換えられる楽曲です。特に、同じものを好きだった友人と徐々に趣味が違っていってしまい疎遠になってしまうこと、あんなに好きだったアーティストが今ではあまり興味がないことなど、何かを好きというの気持ちの移り変わりと響き合うはずです。

 何かを好きになると周りが見えなくなるものです。空を小さく感じさせるほどに。小さな空の下にしかない幸せがあります。それは『デモサヨナラ』の世界です。一方で、やがて大きな空へ飛び立とうとする人がいます。そうした『デモサヨナラ』とは反対の価値観を歌っているのが『それは小さな空だった』の世界です。

 きっと、『それは小さな空だった』はドロシーの新しい名刺となるでしょう。それは、アイドルファンのための名刺だけではありません。普通の音楽好きや、ヒットソングしか聞かない人、カラオケが好きな女性。多くの人たちにとってドロシーを覚えてもらう武器になるはずです。なぜなら、こんなに複雑で、誰にとっても共感できるラブソングはないのですから。この曲でしか映せない景色があり、ドロシーにしか表せない感情があり、それは一度届いてしまえば絶対に忘れることができないものです。次のドロシー旋風は、とてつもなく大きなものになりそうです。


circle of the world (CD+DVD)

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STARTING OVER (ALUBUM+DVD)

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