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細々とこっそりとちまちまと

アイドルソングの感想・レビュー、ライブレポ。

「アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48」が教えてくれる卒業の本当の意味

 本日7月10日、『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』が公開初日を迎えました。僕は次の日曜日に見に行く予定で、前売り券も買いました。とても楽しみです。
 今年はAKB48グループのドキュメンタリー映画の公開が続きます。そもそも最初に「AKBって面白いなあ」と思ったのが2012年『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』のときでした。まだアイドルヲタクとしても若葉な頃でメンバーもわからないなりに興味本意で映画館に行って衝撃を受けたのです。最初は月曜日に見て、水曜日にもう1回見に行ったとき、そのとき後ろのお客さんがおしゃべりしてるのが本当にイライラしたことをよく覚えています。「今、あっちゃん頑張ってるんだからさ!!!」と心が熱くなっていました。そういう風に琴線に触れる映画でした。それ以降、毎年欠かさず見に行っています。4作目は感想も書きました。*1

 AKBのドキュメンタリー映画はファンムービーではありません。かつての僕のように、グループのこともメンバーのことも何も知らなくても楽しめる・・・というか胸に響く何かをぶつけてくれる作品ばかりです。AKBをわからない人も、興味ない人も、正直嫌いな人も見た方がいいと僕は思います。むしろ、そんな人だからこそエンターテインメント性を最高純度で感じられるはずです。

 そして、今回は乃木坂46の映画公開に便乗して、そういえば書いていなかったSKE48のドキュメンタリー映画の感想を書きます。今年2月に公開された『アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48』(以下、SKEドキュメンタリー)がどんな一発を食らわせてくれる作品だったのか、今さらながら語っていきます。


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ザ・ドキュメンタリー映画

 できることなら2回、3回と見たかったのですが、SKEドキュメンタリーを1回しか見ることができませんでした。ディテールは忘れていることも多く、どうやって語ろうかとパンフレットを手に思い出しています。でも、大丈夫です。最も伝えたいことだけは時間が経っても僕の中に残っています。
 AKBドキュメンタリーの2作目は"戦争映画"、3作目は"宗教映画"として語られることもある作品です。4作目については持論ですが"動物ドキュメンタリー"に近い手法の映画だったと考えています。3作ともアプローチが微妙に違い、映像作品として最も必要な要素を満たしています。

 SKEドキュメンタリーの監督は元NHKプロデューサーで今もAKB48グループに熱い愛情を注いでいる石原真さん。だからでしょうか。比べてみると、ドキュメンタリー映画の王道的作品になっていました。SKE48立ち上げ時の大変さを語る前半部分。メンバーが当時を振り返るインタビューを織り込みながら、卵が割れ雛鳥として生まれたSKE48の羽が広がるまでを丁寧に描いていきます。映像作品として必要な要素を満たしながら。
 僕たちが映画に求めているもの、それは見たことも想像したこともない映像です。例えば、牧野アンナ先生のレッスン途中に少女がひとり倒れ、それでも音楽は止まらず何事もなかったようにレッスンが進むシーン。見たことがないくらい怖い映像だと思いました。過酷なレッスンを倒れるまで取り組まなければならないこと、ひとりが倒れても止まらないこと。その事実の向こう側にある「何が何でも勝ちたい!」という執念。そうでもしなければならないという危うさ。思い出すだけで鼓動が速くなる衝撃映像でした。
 作り手の「見たことのない映像をスクリーンに映したい」という気持ちはサービス精神です。それが満足して席を立てるかどうかの分かれ目なのですから。SKEドキュメンタリーにはいくつもの衝撃映像が仕込んであり、観客の感情を揺さぶります。過去作品以上にドキュメンタリーの手法にこだわった作品だからこそ、裾野が広く、グループの全体と細部をバランス良く見せてくれます。SKEドキュメンタリーの衝撃は他のAKB作品、いやどんな映画作品でも感じることができないオンリーワンなものです。もちろん、SKE48ファンかどうかは関係ありません。

卒業鎮魂歌

 衝撃という意味で、SKEドキュメンタリーには驚きの仕掛けがありました。SKE48を卒業したメンバーが多数出演しインタビューに答えていたのです。
 アイドルファン用語に「他界」というものがあります。様々な理由で好きだったアイドルに会いに来なくなり、他のアイドル現場ばかりに行くようになる状態を呼びます。つまり、「○○ちゃんのヲタクとしての死亡=他界」というロジックですね。
 この論理を発展させるならば「卒業した○○ちゃん=他界」と考えることもできます。その視点で見ると、SKEドキュメンタリーの卒業生たちは幽霊です。そして、幽霊が今どうやって生活しているのか、どんな世界にいるのかが明かされるわけです。それは霊界なのか天国なのか地獄なのか。いずれにしてもこの世ではありません。

 アイドルヲタクが最も恐れているもの。それは推しメンの卒業です。僕にも経験がありました。卒業発表があって自分がどれだけその子が好きだったかを知りました。重めの失恋をしたときが近い状態でした。毎日メソメソするしかなかったあの頃は大切な人を失くした遺族のようで、同時に、死人のようでした。
 僕たちが卒業を恐れ、卒業に感じる理由は、生き物の死と重なるものなのかもしれません。大半の生物にとって最大のリスクでありながら、いつか必ず訪れる終わりのとき。なぜ、人は死を恐れるのでしょう。理由は2つ。「死んだあとのことがわからないから」そして「生きることしか知らないから」です。ちょっと話が大きくなってしまいましたが、どうですか。アイドルと卒業に置き換えられると思いませんか。

 SKEドキュメンタリーが見せてくれた卒業生の今。芸能人として夢を追いかける子、社会人として普通の仕事に就いた子、もうすぐ結婚すると話す子。自分の推しメンだったらと考えながらその姿を見ていました。そのとき僕なら嬉しいのか、悲しいのか、悔しいのか。考えるだけで泣けて仕方がありません。いろんな感情が混じった涙を流しながら、僕はこう思うはずです。「元気そうでよかった」と。そうして初めて気が付きます。卒業の本当の意味に。
 アイドルの卒業はどうして悲しいのでしょう。ステージに立つ姿が見えなくなること、握手会で話せないこと、ブログを読んだりツイッターでリプライ送ったりできなくなること。悲しいのは「当たり前の日常」の喪失に過ぎません。つまり、卒業それ自体に感じていることの大部分は、悲しみではなく、アイドルの将来を心配する不安な気持ちとわかります。
 そして、この映画はアイドルヲタクの不安を照らしてくれる作品です。SKE48の卒業生たちの姿、語る言葉を通して、卒業の先の未来に希望を感じることができます。その光は、推しメンの卒業を経験した人にとって鎮魂歌となり、これから卒業の辛さを経験する人が闇に落ちるのを防ぐ蜘蛛の糸となるでしょう。「卒業は別れじゃない、旅立ちだ」そう教えてくれるのです。



 さて、思い出しながら書いてみましたが、ネタバレどころか映画本編の話がほとんど出ない事態になってしまいました。その分、映画を見ていない人が読んで面白いと思ってもらえれば嬉しいです。そして、ぜひ9月9日に発売されるDVDを手に取ってみてください。

 加えて、書いているうちに今日公開の『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』への期待値ガンガン上がってしまっています。まあ、大丈夫でしょう。ぜひ作品から必ず何かを受け取って感想を書きますね。そのときにはまたいらしてください〜。


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